古き良き“普段着の味”を今に伝える神楽坂「五芳斉」のワンタン麺。
五感を研ぎ澄ませて目の前の1杯に向き合うのもひとつの醍醐味であれば、昼下がりにフラリ立ち寄った何気ない中華屋さんでズビビン啜り上げるのもラーメン巡りのまたひとつの醍醐味。
東京都新宿区榎町(えのきちょう)。東京メトロ東西線・神楽坂駅徒歩7分ほどの早稲田通り沿いにある老舗町中華「五芳斉(ごほうさい)」のワンタン麺と冷し中華をご紹介。
東京メトロ東西線・神楽坂駅と早稲田駅の間くらいの場所にある老舗町中華「五芳斉」
町の中華料理屋さんといえど暖簾は無く、開閉しづらい引き戸と赤に白字の袖サイン(突き出し看板)が目印。
固くてなかなか開けられない時は内側から開けてくれて、「開けづらくてすみません」などとちょっとした談笑に発展するこの感じ、たまりません。
店頭にはレギュラーメニューに加えて日替わりメニューも掲示。
カウンター席無し。テーブルが入口左手に4名掛け3卓、右手に2卓、奥にも席ありで計20名以上のキャパシティ。
BGMはテレビ。客層は近隣で働くサラリーマン中心で、全面喫煙可なため食べ終えて一服する方もちらほら。
分煙に取り組む飲食店が増えつつありますが、「五芳斉」では数十年前の東京ではごく当たり前のように見受けられた光景が広がります。
ラーメン1杯530円から。セットがお得な神楽坂「五芳斉」のメニュー一覧
餃子、鶏唐揚げ、麻婆豆腐に加えてとん汁など。
中華料理屋さんでとん汁。何だかカレーライスととん汁って大手牛丼チェーン店の組み合わせみたいですが、亡くなられた2代目ご主人の後を継いだ奥様が、それまで出していた料理に加えて自分にも作れるとん汁だとかを採用したり、ラードを止めて普通の食用油に切り替えたりと、色々と試行錯誤を経た上でのメニュー構成なんだとか。
醤油ラーメンが530円。ワンタン麺でも70円増しの600円。
半チャーハンはよくあるけれど、100円のちょっぴりチャーハンだなんてかわいらしいサイドメニューもありつつ、日替わりでサービス麺も用意。(この日は味噌ラーメンでした)
定番の卓上調味料もバッチリ配置で、自家製ラー油も完備。
脈々と受け継がれて来た古き良き“普段着の味”。神楽坂「五芳斉」のワンタン麺
こういうのでいいんだよ?いや、こういうのがいいんだよ。
どストライクな見た目。スープ表面を頭と見立てるならお箸でヨシヨシ撫で回したくなります。
ワンタン以外の基本トッピングは、豚バラ肉のチャーシュー、メンマ、刻みネギ、そしてナルト。
半チャーハンセットにすると頼もしさに拍車がかかるビジュアル。
ケレン味皆無のシンプルテイスト。それでも本炊きと分かる力強い醤油スープ。
煮干しにカツオ節にサバ節に昆布など、いわゆる魚介ダシの入らない昔ながらの中華スープは、化学調味料の気配こそ漂うもののひと口含めば「おお」と唸らせるだけのコクもバッチリ。
個性的なラーメン店としても名高い四谷三丁目「一条流がんこラーメン総本家」の家元・一条安雪氏もかつて公式ブログにて「本物の味覚に目覚めたかったら食べ続けること」としてここ「五芳斉」のラーメンを推薦しており、気になる方は足を運んでみると良いかも。
細かいこと抜きに啜るのが楽しい、気持ちウェービーな中細麺。
片手で丼を持ち上げ、チュルリラチャルメラ勢い良く中華麺を啜り込むお客さんもおりましたが、その気持ち、何だか分かるなー。この手のラーメン、豪快に平らげたくなるんですよ。
70円増しだから気持ち程度のワンタンかと思いきや、小ぶりながらも8個も入ってた!
まさに雲呑(わんたん)の字のとおり、雲を呑み込むかのような快感が8回も楽しめる幸せ。
途中でマグカップに入った自家製ラー油をレンゲにちょこん。
少しずつスープに溶かしていただけば、カラダポカポカ額からじんわり汗もにじみ出て、こいつは天然のデトックス効果が期待できるかもしれませんし、そんなん抜きでもワンタンとは好相性。
塩味ベースの半チャーハンはてっぺんにカニのほぐし身。
ぱっと見、昼メニューにカニを使った料理は無かったけれど、半チャーハンといえどもこういう細かいところにまでこだわっているのって食べ手としては嬉しい限り。
年中食べられないから夏が待ち遠しい。神楽坂「五芳斉」の冷し中華
大体GW明けから夏の終わりくらいまで楽しめます。
セットの冷し中華だと価格が抑えられる分ボリュームも控えめ。写真は単品バージョン。
チャーシュー、モヤシ、キュウリ、カニカマにゆで卵。
飾り切りが施されているてっぺんのゆで卵。滑り止めの配慮も兼ねているんだろうけど、先の半チャーハンのカニほぐしといい、女性ならではの気配りとも受け取れますが、丁寧な仕事しているんだろうなーって想像に難くありません。
麺量は200gあるかな?サラサラ酸味の爽やかな味わい。
カラシをつけて吸い込む麺、覚えるいくばくの刺激、夏の到来に何となく感謝。
ここでもラー油を取り入れ、酸辣風にするのもアリ。
ピークタイムを外し、13:00頃に訪問すると快適な食事が楽しめます。
常連客が非常に多く、彼らの会話を副音声がてら楽しむも良し、思い切って従業員に話しかけてみるも良し、もちろん黙々とマイペースに食べ進めるも良し。
榎町のおとなりが早稲田エリアということもあり、夏に選抜高校野球の中継でも流し見しつつ冷し中華やラーメン、時には定食だとかをのんびりと突っつきたくなりますね。
今年も暑い夏がやって来る。
今や日本のラーメンは和食と認識され、絶品ラーメンを食べることに困らなくなりましたし、こだわりの1杯を追い求めるのも興味深いんですが、肩肘張らずにフラッと入ったお店で味わうラーメンが想像以上においしくってほんのひと時でも都会の喧騒から離れることができるなら……東京の食べ歩き、まだまだ当分やめられそうにありません。
店舗情報
店名 | 中華 五芳斉(ごほうさい) |
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住所 | 東京都新宿区榎町41(地図) |
電話番号 | 03-3268-7539 |
営業時間 | 11:30~14:00、18:00~21:00(土曜日は昼営業のみ) |
定休日 | 日曜日・祝日 |
最寄駅 | 神楽坂駅、早稲田駅、牛込柳町駅 |