老舗といえば“はんなりとしたお味”などといった上品なイメージを思い浮かべる方も少なくないと思うのですが、ことB級グルメ、それもラーメンに関しては必ずしもその連想が当てはまらないケースがありまして、今回は鳥取県琴浦町の老舗ラーメン店「すみれ」を紹介することでそれを実証してみたいと思います。
先日お届けした「東京、最後の晩餐 35選」では東京の飲食店をバババンサンと列挙いたしましたが、「すみれ」が都内に店を構えていれば間違いなくピックアップしていたことでしょう。とくとご覧あそばせ下さい。
0.目次&関連記事
- 風情と呼ばずして何と呼ぶ的な「すみれ」の外観
- 漂う昭和感、テーブル席が充実した店内
- 琴浦町「すみれ」メニュー一覧
- 鳥取で約60年の歴史を誇る自慢のこってり牛骨醤油スープ!琴浦町「すみれ」のチャーシューメン770円
- 代わりに召喚
(※セルフサービスだから)したのは見るからに味が染み込みまくったおでん達(各種110円) - 店舗情報
1.風情と呼ばずして何と呼ぶ的な「すみれ」の外観
JR山陰本線浦安駅徒歩10分
何だか不気味な1枚ともとれますが、空は大変広うございました。
年季の入った日本家屋がちらほら見受けられる通り道をスタスタ。
2013年にテレビアニメ化された漫画作品「琴浦さん」の舞台と書けば、分かる方には分かるかもしれません。
この手のいい感じの街並みは地方に数多いことでしょう。
でも、こーんな佇まいの外観となればハナシはちょっと変わってきます。
古くから続いている飲み屋を彷彿とさせますが1958年(昭和33年)創業。日清食品のチキンラーメン、東京タワーと同い年の56歳。現店主で3代目。
「すみれ」のれの隣りに“味自慢”とかってつい書き足したくなる淡い色の暖簾。
ただ、車だと普通に通り過ぎちゃいそうなさり気ない店構えがそそるんだろうな。飛び出し坊やののんきな表情、おでんの赤提灯に「やっぱり居酒屋なんじゃないか?」って印象を拭い切れないままの入店でした。
2.漂う昭和感、テーブル席が充実した店内
「下北沢・一龍」とは少々異なるチェアタイプな椅子のカウンター席。
冷水機にテレビに漫画棚、ちょっとした三種の神器もしっかり完備。
卓上調味料は胡椒、おろしニンニク。
いわゆるレンゲ以外に木製タイプのも置かれていましたが、こちらは好みで使い分けろってことなのかな。子供の頃なら木製レンゲで「視力検査!」とかって遊んで親に叱られていたに違いありません。
3.琴浦町「すみれ」メニュー一覧
麺類
商品名 | 価格 |
---|---|
ラーメン | 570円 |
ラーメン(大) | 700円 |
チャーシューメン | 770円 |
チャーシューメン(大) | 900円 |
トッピング・単品など
商品名 | 価格 |
---|---|
ねぎ、もやし、ゆでたまご、バター、のり | 各50円 |
メンマ、煮豚、チャーシューハーフ | 各100円 |
ライス(大)・(中)・(小) | 250円・200円・150円 |
おにぎり(うめ・こんぶ・たらこ・しゃけ) | 各1個120円 |
おでん(※セルフサービス&申告制) | 各種110円 |
ビール(キリン・アサヒ)大瓶 | 各600円 |
日本酒(鷹勇 上撰) | 1合400円 |
注文はせっかく足を運んだからラーメンよりはチャーシューメン。それとおでんは確実にいただく予定だったのでライスやおにぎりの追加オーダーはなし。
セルフサービスのおでんを何の疑問も持たずによそう幼女。
「ヘイそこのキミ、ユーが当たり前のようにキャッチしているそのおでん、そもそもラーメンとおでんをまとめてイートインできるお店って結構レア、ちょっとこっち来て愛を語るよりおでんをかわそう…ってあのコのお父さんですか、失礼しました串刺さないで」と、声をかけようものなら警察にだってキャッチされそうな気もしたので、将来彼女が上京したり遊びに来たタイミングで東京のラーメン屋さんに足を運んだ時、慣れ親しんだおでんがないことをどう思うのかななんて、ただただぼんやりと眺めておりました。
4.鳥取で約60年の歴史を誇る自慢のこってり牛骨醤油スープ!琴浦町「すみれ」のチャーシューメン770円
目にした瞬間、唐突にハイキュー!!主人公のような歓喜の声を上げちゃった。
放射状に並ぶ8枚の豚バラチャーシューの空を覆う曇天模様にも似たアブラたっぷりの醤油スープ。
いかにも濃厚そうなスープを彩るように配置された具は、8枚のチャーシュー、メンマ、もやしに刻みネギとスタンダードタイプ。
「境港・蓬莱」の牛骨醤油ラーメンよりも確実にオイリー、ちょっと粘度すら見て取れそうなビジュアル。
油膜を切り取るようにレンゲですくい取ったスープをズビビビ。
山陰屈指の豪雪地帯とされる鳥取県において、厳しい寒さを乗り越えようとした先人達が試行錯誤の末にたどり着いた答え、の1つかもしれないアツアツこってり、独特の甘いクセと力強さを兼ね備えた醤油味。
レンゲでズビビビ、立て続けに麺でスープを持ち上げズビビンズビビン。
ネギともやしのシャキシャキ系が箸休めとしての役割も果たしますし、
薄めカットでトロトロっぷりが一層強く感じられるバラ肉チャーシュー。
巻きつけてズビビンゲリオン、放り込むように啜ればついエヴァ初号機ばりの咆哮を繰り返したくなるシンジ君だっているかも分かりません。
そしてこの手の濃いスープと相性抜群なゆでたまご(+50円)。
「湯島・ラーメン大至」の記事でも簡単に触れましたが、口の中をリセットするなら味付玉子よりも断然ゆでたまごなんですよねぇ。
口内の雑味やふざけた妄想だとかをキレイに取り去ってくれるそれはおれにとってよっぽどスーパームーン。
かじった後に再びスープを飲むとクリアなこってり→こってクリアな、不思議と最初の1口目が呼び戻されたかのようで、最後まで飽きることなく美味しく楽しめること請け合いです。
で、この手の1杯にはごはんものがバッチリハマる気はしたんですが、ライスだおにぎりで牛骨ラーメンをおかずとして立ち上げつつおでんまで召し上がるとお腹いっぱいで立ち上がれない気がしたので今回はガマンガマン。
5.代わりに召喚(※セルフサービスだから)したのは見るからに味が染み込みまくったおでん達(各種110円)
牛骨ラーメンが売りのお店だから何となく牛すじ2本取ったった。
店内窓側に設置されたおでん台魔法陣の前に立ち呪文を詠唱、
木蓋をパカッとずらしてお目にかかれるお姿に「おほぉ」。
牛すじ、シイタケ、コンニャク、煮玉子、定番の大根…って取り過ぎた。
牛すじはプルンプルンで思わずピンボケ!(※毎回肝心な写真ではいつもそう)
ちなみにコンニャクと大根の間のちょこんはおろしニンニクで、
練り辛子の代わりになるかもと考え乗せてみましたが、これが見事なくらいにミスマッチ、辛子じゃなく考えをもっと練るべきと後悔先に立たずでしたので、皆様におかれましてはおろしニンニクはラーメンに。これお忘れなく。
牛すじやシイタケがシミシミ柔らか、確かな歯応えのコンニャクが嬉しい。
ホクホクした食感の煮玉子…おっと、ゆでたまごと煮玉子でたまごがダブってしまった…って、お約束のセリフが心に上がる狼煙だったのでしょう。
煮玉子のホクッ、牛すじのプルッ、チュルルン麺をズビドゥバシュビドゥバ、おれのマインドは戦国時代、独り勝手にメシ合戦を繰り広げた末に完食です!
ほらね、完食!(※いい加減モザイクかけるなら乗せなくてもいいかなって思うようになってきた今日この頃です)
帰りに見かけた大木を撮影していたら地元のヘルメット中学生が一礼してきた。
うんうん、その謙虚な姿勢を貫き通せれば未来もきっと明るいさ、知らんけど。
そんな彼らにとっても思い出の味に値するかもしれない「すみれ」の牛骨醤油ラーメンとおでん。この味求めて鳥取にゴーってのとはちょっと違いますが、縁あって琴浦町を訪問する際には忘れずに訪れて欲しい、少なくともおれは訪れたい、そんなステキなお店でしたとさ。