- 2017/02/24:更新
- 2006/03/31:初公開
どーんとボリュームたっぷりな西新橋「港屋」の温かい鶏そば。
立ち食い蕎麦って便利ですよね。いつ行っても営業しているし、“早い・安い・旨い”の三拍子を徹底しているから気軽に利用できちゃう。
そして、そんな立ち食い蕎麦屋さんで最も異質かつ大胆なお店といえば、東京・西新橋にある「そば処港屋」。
2002年7月創業と中堅クラスの歴史を誇りますが、オープンしてから今日に至るまで、蕎麦業界はおろか飲食業界全体、いや、それすらも飛び越えて強烈なインパクトを与え続ける孤高の存在。
こんな蕎麦、そうはお目にかかれません。
今回は“蕎麦界のラーメン二郎”と呼ばれ、恐らく日本一行列のできる立ち食い蕎麦「港屋」を紹介いたします。
東京メトロ銀座線・虎ノ門駅徒歩6分。虎ノ門ヒルズそば、大行列が目印の立ち食い蕎麦「港屋」
どかんと虎ノ門ヒルズを構える愛宕一丁目交差点付近。
軒高247m、他を圧倒するには充分な見た目と言えますが、
「港屋」の外観だってなかなかのもの。
ランチのピークタイム(12:00~13:00)を過ぎた時間帯でも店内からあふれ外に並ぶお客さん多数。ちなみにこれでも全然少ない方で、まったく知らないと一体何の行列かすら分からないことでしょう。
蕎麦屋どころか飲食店にすら見えないオールホワイトな外壁。
かつてはオールブラックで、近年白に塗り替えられました。
全面真っ白な建物ってなかなか見かけませんよね。それも東京都港区とはいえ、どの駅からも地味に歩く場所にそんなのがあった日にはその驚きもひとしおなワケで。
真っ白、それでいてどこか立方体を強調した建物、出入り口は1つしかないそれはまさにCUBE。デザイナーズレストランならぬ、デザイナーズ蕎麦屋がここ「港屋」なのです。
座席無し、池を擁する大きなテーブルに向かい合って黙々と蕎麦を啜るお客さん
中央に生け花、ゆったり流れるクラシック。けれど口にしているのは大盛りの蕎麦!
世にも奇妙ならぬ、世にも珍妙な食事風景とはこういったことを言うのでしょうか。
なお、店内の壁に「島耕作」のイラストや漫画原稿が飾られておりますが、これは「港屋」が同作品に度々登場しているからで、原作者・弘兼憲史氏もお気に入りということなんでしょう。
タレントのサインをベタベタ貼る飲食店は枚挙に暇が無いけれど、さり気なく「島耕作」。こういう工夫って面白いですよね。
全6種類のメニューから選択、前金制。
唯一のホットメニューとなる温かい鶏そばをチョイス。温かい=汁蕎麦ととらえるかもしれませんが、「港屋」の場合はオールつけ蕎麦。つゆが温かいか冷たいかといった意味で商品名に冷たい or 温かいと付けられておりますが、鶏そば以外のつゆはすべて冷たいのです。
会計を済ませ、スタッフの指示に従って前に進み、先客と交代するカタチで空きスペースに陣取ります。そのスペースに蕎麦を運ぶのも自分、食べ終えて店内奥のカウンターに下げるのも自分と。
ここらへんのセルフサービスはいわゆるひとつの立ち食い蕎麦形式を踏襲しているものの、意外と女性客が多いのはちょっとしたバーを彷彿とさせるオシャレな空間って点も一役買ってそうですね。
ラー油と胡椒タップリの特製辛みダレに極太の黒い蕎麦もこれまたタップリ!西新橋「港屋」の温かい鶏そば
店内薄暗く、ノイズ多めな写真であることはご了承ください。
縁までたっぷりと注がれた鶏肉の旨み全開のつけダレ。
刻み海苔と白胡麻がワサッと乗っておりますが、下の蕎麦だってかなりの分量。
茹で時間は極太の割には大分短いのですが、それでも生とは違う「港屋」独自の食感。ご主人いわく「少ない量の蕎麦は嫌い」とのことで、その信念を見事に体現した珠玉の1杯。
並盛りで推定200g台後半、黒くて固くて太い田舎蕎麦を丼から引っ張り上げてジャブジャブと。
持ち上げてズヴィヴィヴィヴィン!
……この蕎麦ね、ものすげえコシなの。冷やせば基本的に麺類にコシは生まれるもんですが、押し返すほどのコシって相当珍しいし、本来香りだとか喉越しを重視する蕎麦において、海苔・胡麻・胡椒に極めつけのラー油を加える過激っぷり。
ちょっと遠くから見たら決して蕎麦とは思えず、威勢の良いラーメン屋のつけ麺を彷彿とさせる出で立ちなんだけど、噛み締める度に舌は紛れもなく蕎麦って認識するんだよなぁ。
ブツ切りの鶏がゴロリと野性的。
人によっては途中で止めることも困難な中毒性。
蕎麦つゆにラー油?それもちょっとやそっとならぬタプタプタプー、大量のラー油を入れちゃうから辛い。辛いんだけど、それ以上に旨いが勝ってどんどん食べ進められちゃうんだなーこれが。
もちろんそんなラー油の増減はじめ、ネギ・胡麻・海苔各種少なめやら抜くことは可能ですので、その場合は食券購入時に伝えましょう。(蕎麦少なめもできるので少食の方もご安心を)
卓上設置の生玉子・天かす・唐辛子・ワサビで味変。
追加料金不要。工夫次第でたぬき蕎麦にも月見蕎麦にもできちゃいますよと。何とも太っ腹なシステム!(完食するとリアルで太っ腹)
この手の辛いつゆに生玉子は鉄板。
だからつゆにドボンしてかき混ぜるのが常套なんでしょうが、個人的には丼にエイヤと入れて撹拌した方がね、つゆとの絡みも一層のものになるからおすすめっす。
ぬわーんと。
四隅のシルバーポットには蕎麦湯。
汚いのでモザイク処理済みですが、最後はお好みの濃さに割って汁完しちゃいましょう。
蕎麦の栄養をもれなく摂取するために、〆にはもちろん、折り返し地点で注いでみるのも面白いでしょう。玉子とはまた違った蕎麦の甘みが辛さを和らげてくれます。
退店。満腹感だけを残し日常に戻るこの感覚、嫌いじゃありません。
絶えない人の波、盛られる豪快な量、そこら辺が「ラーメン二郎」を彷彿とさせるんでしょう。
すべてにおいて前衛的なスタイルの蕎麦屋、それが「そば処港屋」。外観、内装、食事スタイルといい、既成概念を見事にぶち壊す蕎麦界の革命児。その手法を真似るインスパイア店は今日も後を絶ちませんが、やはり本家はひと味もふた味も違いますねぇ。
ほぼ通し営業ではあるものの土日祝日休みとハードル高め、それでも機会があったら1度は訪れてみるべき1軒だと思います。
店舗情報
店名 | そば処港屋(Minatoya) |
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住所 | 東京都港区西新橋3-1-10(地図) |
電話番号 | 03-5777-6921 |
営業時間 | 11:30~17:00、17:30~20:00(売切れ次第終了) |
定休日 | 土曜日・日曜日・祝日 |
最寄駅 | 虎ノ門駅、御成門駅、神谷町駅、新橋駅 |