トロットロの餡がたーっぷりかけられた「荻野」のやきだんご。
2017年も桜が満開を迎え、名所巡りが楽しい時期ですが、桜を愛でつつ欠かしたくないのが和菓子、それもお団子!
つまりは花より団子というワケですが、谷根千(谷中・根津・千駄木の各頭文字を取った東京の大人気散策エリア)や上野界隈でのお花見にもってこいなのが谷中の老舗和菓子屋「荻野(おぎの)」の各種お団子類でございます。
1963年(昭和38年)創業。谷中で50年以上続く老舗和菓子店「荻野」
最寄駅は東京メトロ千代田線・千駄木駅で徒歩5分くらい。日暮里駅からだと徒歩10分ほどといった距離感。
お団子ゲットしてからの花見なら千駄木駅下車(ただし坂を上る必要あり)、谷中霊園の桜並木道を通って向かう場合は日暮里駅から向かうと良いでしょう。完全に散歩な道のりとなりますが、上野駅から目指すことも可能。
福島県出身の店主が22歳で独立し、この地で店を構えて半世紀以上。こだわりの和菓子が並びます。
季節によって店頭ディスプレイは細かいレベルで変わりますが、定番にして「荻野」で最も高い人気を得ているお団子(やきだんご&草だんご)は通年展開。特に草だんごに至っては小泉純一郎元首相が惚れ込んだという同店の看板商品。
そんな前首相との写真がさり気なく飾られている店内上部。
小泉さんと言えば、首相就任直後の2001年大相撲夏場所で時の横綱・貴乃花に対して「痛みに耐えてよく頑張った!感動した!おめでとう!」という賛辞を送ったことでも有名ですが、きっと「荻野」の草だんごについても「感動した!」って評したことでしょう。
上質の素材と高度な職人技がさり気なく散りばめられた谷中「荻野」の絶品やきだんご&草だんご
毎回包み紙を開ける度に「おほぅ」ってため息が漏れちゃうくらいに餡がもうタップリ。
トロットロの砂糖醤油の葛餡でヒッタヒタのやきだんご。
普通にみたらし団子って商品名にでもすれば良いのに、そうすべきとも思えるほどにビッシリかかった、いやもうかかったではなく浸かった、トプトプと浸かっております。
トプトプトプーと。
ガヴリ!からの、やわらか~い!甘じょっぱ~い!うま~い!!
何だか売れない芸人みたいなリアクションをしてしまいましたが、この1個分をかじり取った後の写真をご覧ください。串先端部分がシャンプーで髪の毛をおっ立てた時のウルトラマンみたいになっていることがお分かりいただけるでしょうか。
見た目しっかりと団子の形を保っているからそのまんまスポンとキレイにかじり取れそうって思いますが、この世に数あるお団子の中でも相当モッチモチなそれは串から外すのがやや大変。
でも、その果てには柔らかモッチモチタイムが待っているワケでして、単に柔らかいだけならそもそも団子の形状を維持することができないように、絶妙なコシも兼ね備えているんですよね。
北海道産特上小豆による上品な甘さの餡とヨモギのカホリが渾然一体となった「荻野」の草だんご。
何とかキレイに撮れないものかと苦慮した末の1枚がこんな下品な感じとなってしまい大変恐縮ではございますが、上品な餡がこれまたタップリと乗っかっております。
アイスの裏ブタを舐めるようにこの餡もペロンチョしたい。
容器やフィルムに付いた餡を拭い取るように、完食。
団子自体にも特上新粉が使用されており、餡が無くとも「うま~い!」ってアホの子みたいな反応をしてしまうんでしょうが、草だんご、やきだんご双方の餡とも嫌味をまったく感じさせず、ちょっと爽やかさすら覚えるくらいのテイストなんだけど、じっくり味わうと大変奥深いもんだと分かります。
別の日に撮った比較的キレイめな写真。
今ぐらいの時期だと桜餅も販売していて、これもまた美味しい。
サツマイモの皮を食べる派と食べない派がいるように、この手の葉っぱも食べる派と食べない派に分かれるとは思うんですが、塩味の葉っぱが餡の甘みを引き立てる、スイカにおける塩みたいな効果がありますので遠慮せずガブリといただいてみてください。
豆だけで着色した自然な色味の赤飯各種も人気。
ご覧のおにぎりタイプと容器に詰めたおこわタイプの2種類ありますが、おにぎりタイプは食べ歩きにも向いてておすすめ。
もちろん草だんごのガヴリシャスもお忘れなく!
確かな食材と確かな技術。そしてそれらを声高に主張しない控えめな性格あってこその逸品
ご主人に営業時間を尋ねた際のエピソード。
「荻野」は朝07:00から18:00の通し営業だそうで、それを聞いた時につい「えっ?そんなに長時間も通しなんですか?」って聞き返しちゃったんですが、店主は少々微笑みながら「ここらへんのお店はみんなそうですよぉ」との超然っぷり。
働き盛りの若い世代でも11時間営業ってかなりの負担としてのしかかって来るハズですし、仕込みや片付けの時間も含めたら11時間以上に及ぶであろう仕事を週1休みで長年も。それでもさも当たり前と言わんとばかりの落ち着いた受け答えに、確かな食材と確かな技術、そしてそれらを声高に主張し過ぎないご主人の控えめな性格あってこその逸品と確信しました。
満開の桜とともにいただく「荻野」の和菓子は乙なもの。
そこに、寺町・谷中を象徴する「観音寺の築地塀(ついじべい)」をセットで楽しむともっと粋。
土と瓦を交互に積み重ねて造った土塀に屋根瓦をふいたシロモノで、なんとこの「築地塀」は江戸時代製。
増強目的で施されたと言い伝えられておりますが、よくもまあこんな広範囲にと驚き感心することしきり。
堅実な工程を経たと思われるこの「築地塀」と「荻野」の実直さが何となく重なって見えて、地道の大切さを実感できるんじゃないかって思いますし、そういう意味でも「荻野」とセットで立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
ってまあ、「築地塀」裏の枯れた大木が食べ終わった後のだんご串に見えただけの、要するに後付けなんですけどね。