1945年(昭和20年)創業の老舗「藤春食堂」の特製焼きそば600円。
ご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」で2009年ゴールドグランプリに輝き全国区の知名度を獲得した秋田県の横手やきそば。その発祥は第2次世界大戦頃までさかのぼり、現在横手市だけでも実に50ものお店で独自の工夫をこらしたこだわりの焼きそばをズビビンズビビンかっ喰らえます。
静岡の富士宮、群馬の太田、秋田の横手。日本3大やきそばの1つにも名を連ねる横手やきそばは、各店舗のレベルアップを図る目的で2007年から毎年「四天王決定戦」なるイベントを開催しておりまして、今年を含む過去8回の大会で6度も四天王に選出されたのが今回紹介する「藤春食堂」なのでした。
アットホームなお店、というか人ん家そのものな横手の老舗焼きそば専門店「藤春食堂」
「この佇まいがすごい」なるコンテストがあったらもれなく入賞
創業当初と変わらない店構えも見逃せないポイント。
ただでさえ新しい自動販売機が一層新しく見える不思議。
「四天王決定戦」の常連店と丸分かり、店頭に飾られた歴代の札。
今年も見事選出され、その年の四天王のみが掲げられる専用のぼりがパタパタ。
JR横手駅のおとなり柳田駅から徒歩6分ほどの場所に位置するものの、ここが焼きそば四天王の常連と知らなければ観光客はまず立ち寄らなさそうな、本当に地元民だけが足を運びそうなローカル感満載の外観。
店内も負けず劣らず人ん家、藤春さん家以外の何物でもない
入口の引き戸をガラガラすると目に飛び込んでくる「土足OK!」の貼り紙。
店内はガラガラどころかお客さんの入りは上々だったものの、それでも人ん家の食卓に上がり込んだかのような、気分はヨネスケといったところでしょうか。
ある意味年代物と言っても過言じゃないソファじゃなくイス。すっごくイイス。
給食かよとツッコミを入れたくなるくらいに皆が皆焼きそばをズビビンと。
席の構成は、入口入ってすぐのところに2卓、右手奥に2卓のオール4名掛けテーブル席で、混雑時には奥の座敷席(というか居間)も開放する模様。
女性スタッフのみのざっくばらんな接客というのも功を奏したのかな、何だか焼きそばを食べに来たというよりは田舎のばあちゃん家に遊びに来たという感覚に限りなく近いのもナイス。
「藤春食堂」のメニュー一覧
商品名 | 価格 |
---|---|
並焼きそば(キャベツ) | 350円 |
並中焼きそば | 400円 |
肉入焼きそば(キャベツ・ひき肉) | 400円 |
玉子入焼きそば(キャベツ・目玉焼) | 400円 |
肉玉焼きそば(キャベツ・ひき肉・目玉焼) | 450円 |
玉中焼きそば | 450円 |
肉中焼きそば | 450円 |
並ダブル焼きそば | 450円 |
肉玉中焼きそば | 500円 |
肉ダブル焼きそば | 500円 |
玉子ダブル焼きそば | 500円 |
肉玉ダブル焼きそば | 550円 |
特製焼きそば(キャベツ・ひき肉・目玉焼・豚スライス・麺ダブル) | 600円 |
補足
- 麺の量は並1玉(150g)、中1.5玉(225g)、ダブルは倍の2玉(300g)
- ダブルはあくまで麺がダブル。「肉ダブル~」や「玉子ダブル」は肉ないし玉子が倍量入るという意味ではない
「どうしたものか」とメニューをガン見しておりましたら、2代目店主が
店主「初めて?」
おれ「そうっす(※ソースなだけに)」
店主「初めてなら特製がおすすめブツブツ(※以下特製の説明が続く)」
おれ「(初めてだから優しくして欲しい)」
店主「……案外ペロリと食べられちゃうわよ」
おれ「じゃあ特製で!(※熟女によるフルコース…)」
…そんな妄想を抱いた気がしなくもありませんが、特製焼きそばだけが唯一豚スライス乗せということもあり、そっちの方が最後まで飽きることなくズビドゥバシュビドゥバ啜り上げられると判断した次第。せっかく秋田県まで足を運んだんだから目玉焼きはもちろんのこと具沢山に攻めたいですしね。
アレな妄想の相手なんてすることなくモクモクジュージューと調理する様に、
春よ来いだなんて淡い想いを抱いてたら代わりに淡い色した焼きそばがご到着。
1番高くて600円!「藤春食堂」の特製焼そば600円
音楽CDでいうところのベストアルバム的な位置付け
どどんと、目玉焼と豚スライスがどでんとたくましいですね。
接写しすぎてレンズが曇ったまま撮影しちゃいました。
プルプルの半熟目玉焼と福神漬、黄と赤のコラボレーション。
子供の頃に転んで擦りむいたヒザに貼ってもらった絆創膏のような豚スライス。
どかすとそこにはギッシリと密度高めな焼きそばがウォールストレートに鎮座。
はっけよいと持ち上げてもお皿の中太麺がびくともしない量であることを確認。
そもそも基本となる並焼きそばが350円と破格で、この特製メニューも600円とお手頃そのもの。下手に観光地価格に成り下がっていないのは好感、むしろもう少しとってもいいんじゃないかとも思えてくるほど。
黄身をつぶさないよう颯爽と麺だけをすくい上げては一気に放り込むスタイル。
スラムダンクの山王工業のモデルにもなった、同じ秋田県の能代工業高校バスケ部レギュラー陣もきっと顔負けなくらいスムーズかつダイナミックに、左手はそえているだけなのにおれのゴールにシュートがズルピシャ決まります。
店構えも味も創業当初のままをキープしているそうで、たっぷりの薄口ソースがこれまたたっぷりの太麺にしっかり絡み合って、時間と胃袋が許す限りずっと啜っていたい。声高に「おかわり!」と発したくなったのはきっと、かつておばあちゃん家で食べたごはんと一瞬でもダブったからなんだろうな。
ひたひたソースの焼そばに絶妙なまろやかさをプラスしてくれる黄身マジック。
自ら黄身を崩しておいて何ですが、応急処置的に切れ目を塞ぐように青海苔を。
それでも黄身の雪崩が収まらないもんだから白身ごと頬張る強攻策を展開。
ゴールに置いてくるように、自然な流れでレイアップシュートを繰り返し、
ご覧のように完食です!(※汚いのでモザイク処理済み)
地元客は当然、遠方から訪れるファンも多いらしく、当時子供だった小さなお客さんがやがてお父さんになって家族連れでやって来る、まるで鮭の放流みたいなエピソードだとかに事欠かないのはこの手の老舗ならではと言えます。
わずか2時間半の昼営業のみですが、せっかく来てくれたのに閉店していたら申し訳ないからと基本的に年中無休だそうで、飾ることなく、それでも「メニューは焼きそばのみなんですね」と確認した際にさらりと「焼きそば専門店だから」との答えを耳にした時、かつて桜木花道が柔道場で「バスケットマンだから」と答えた時のゴリの表情をしていたと思います…って、長すぎなのでまとめると、長年の切り盛りで培われたであろう挟持を垣間見た気がしますね。
今回の秋田小旅行では計5店舗の横手やきそばを口にしましたが、味だとか雰囲気、色んな要素を考慮した上でこの「藤春食堂」が最もよかったので1発目にご紹介。この記事読んで気になったらレッツズビビンしてみてくださいね。