20世紀少年が終わった。今日発売のスピリッツで、実に7年にも及ぶ連載だったらしい。
コンビニでいつものように立ち読みして知ったんだけど、正直なんだかなー感は否めない。
「うっへー面っ白いなぁこりゃぁ」(※たぶん和田勉風)
出会いは約4年前の2002年初秋、何気なく単行本を買ったのがキッカケ。
まるで内臓を抉るような、前立腺を刺激されてるような、そんな感覚におれ自身を陥れてくれた。正直、持ってかれた。
浦沢直樹の漫画はそもそも前作のモンスターが初めてで、サスペンス要素満載の展開が時に健全に、時に中毒的に自分を魅了してくれたと思う。
モンスター同様、一気に単行本を買い揃えてしまったし、あらゆるストーリー物に対して、一体何がどうやってそうなるんだろう?こうゆうラストになるんじゃないか?
常にそうゆう風に考える自分にとって、モンスター、20世紀少年はツボ中のツボであった。
首をかしげたラスト
ただ、どちらのラストにも首をかしげてしまった。それも後者に対しては特に。
どちらの漫画も多くの読者を抱えてるし、連載に当たり数多くの困難があったと思う。
そもそも、血の大晦日を過ぎた2014年、遠藤カンナが高校生となって登場したあたりから既に疑問ではあった。
主人公は紛れもなく遠藤ケンヂであり、第1巻あたりでもそれは如実に伝えられている。
ただ21世紀を迎えてから、ケンヂが”ともだち”との対決で不合の死を遂げたあたりから、キャラクター紹介、あらすじあたりに随分と落ち着きが見られなくなったように思う。
魁!!男塾じゃないんだし、死んだハズの人間が多数生き返ったりするのはタブーでしょ。
加えて度重なる休載、いくらPLUTOと同時連載をしているとはいえ、これには相当参った。
いくら何でも待たせすぎな10月発売予定の22巻で一区切りとはいえ、もしも頻繁に休載していなければ、同じ期間で30巻以上は出せただろうし、22巻で終わらせる予定であったのなら、7年も費やさなかったハズだ。
最も、本作に限らず人気が出てくれば少しでも長く続けたいのだろうし、作者がそれを望まなくても出版社側はそのハズだから、ジレンマなりはあったと思うが。
おれ自身漫画家でもないし、アシスタントや編集者の経験もないし、だから言えるんだけど、作者自身随分と苦しんだ結果が今回の完結じゃないかな。
難しいです。人によってはこのラストこそが待ち望んでたものかもしれないし、おれには引き際が悪く映っただけで。
フクベエ死後の”ともだち”再登場、もちろんフクベエでもなくサダキヨでもなく別の誰か。一体誰なのだろう?
新たなる焦点がそこに絞ら、おまけにこいつのせいで世界は滅亡する大惨事、死んだと思われてた遠藤ケンヂの生存、更に”ともだち”と決着をつけるために東京へ。
血の大晦日以来の激突が繰り広げられるもんだと思ってた。
事実、ケンヂと”ともだち”が対峙するとこまで来た…!
ネット上でも多くの予想が成されたきたであろう”ともだち”の正体とは…!?!?
判明することなく連載終了。
うぉい!このヤローテメー!
こっちは”ともだち”の正体が誰かを突き止めるのに、ネカフェで全巻読み直したりして頭ん中で整理していたんだぞ!
とにかく今週号には正直拍子抜けであった。
うぉい!の”ぉ”をどうやって発音したらいいものか考え物だけど、それ以上に今週号のラストはあまりに急展開過ぎる、急展開ってゆうかそれはないだろー感が強い。
ケンヂが再登場から自身の存在を明かすのに、無意味に何十週と費やしたのに、姉のキリコがワクチンの実験台となった様を描くのにこれまた何週も費やしたのに、”ともだち”が「僕こそが20世紀少年だ」って言ったところなんて、何気にカッコ良いなと思ってたのに、その他もろもろ、今後の伏線として用いられそうな出来事の描写に相当時間をかけたハズなのに、
それなのに、それなのにこんな終わり方かよー。
まるで大好きなコが転校してどっか遠くに行ってしまった時のような心境だよー。…元気にしてますか?
… … …
ただどうやら、2007年新春号あたりから最終章が始まるらしいじゃない。
どうやらこれまで明かされなかった過去の出来事が、”ともだち”とケンヂとの間に何らかの因縁を生み付けたらしい。
もちろんフリークなくらいに夢中になった漫画だからね、大分時間が空くとはいえ、必ず読みますよ。
しかしね、長期休業は数々の休載に慣れてるから目はつむれるけど、新たなエピソードの発掘ってどうなんだろう。
やはり20世紀少年を通読し、少なからず謎の数々を解明しようと、そんな風に持論を展開してきた人達にとって、今更知られざる逸話が登場するのって、相当期待外れな現実なんじゃないだろうか。
やってはいけないとは言わないけど、良い意味で読者を裏切る手段とは言えないし。
そして何故に半年以上も先なんだろう?最週巻の発売予定からも3ヶ月は先のことだし。
例えばコミックス派とスピリッツ派の目線を一まとめにして、そこから真説へつなげるとか?
あるいは作者、出版社側の何かしらの不具合によるところだろうか。
そう考えてもおかしくはない急展開にも思えた。
ただそこまで引っ張るんだし、何か物凄い真実が明らかになったりするのかも。
そう期待しながら待つし、さすがにもう、これ以上引っ張り続けることはないと信じたい。
ってゆうかそれやったら台無しも良いところだな。
ただ、批判を重ねても仕方がないワケで、受け入れてこそ判る世界だってあるハズである。
自分は大阪万博を体感してないし、原っぱで秘密基地を作ったりしたような記憶もないけど、それでもこう郷愁と言うか、懐古趣味に満ちたストーリー性に共感が持てたのは事実です。
年齢的に主人公のケンヂと作者自身が見事にオーバーラップするあたり、浦沢直樹自身にとっても相当思い入れのある時代を描いた、言ってしまえば彼のカタルシス的作品が20世紀少年なんでしょう。
単に自分がその時代のことを描きたい、そう思うことはいくらでも出来るし、現実に描いてる漫画家だったりは沢山いるんでしょうが、彼らと浦沢直樹の決定的な違い、それはやはり突き詰めた完成度の高さだろうか。
大阪万博が1つのテーマであるし、最もそれに固執し過ぎな部分も否めないけど、かつての子供達の思いの延長線を今作とするなら、その固執も許容範囲内と言えるのかな。
得てしてこれほど時代の流れを上手いこと取り入れた作品も中々ないのでは?
何かと物議を醸し出しそうな今回のクライマックス、それでもそれが20世紀少年の、浦沢直樹苦渋の決断と言えよう。
本格科学冒険漫画と銘打っておきながらあんまり、どちらかと言うとPLUTOの方がよっぽど科学漫画っぽいけれど、それでも20世紀末である1999年に連載を開始した本作こそ、まさに20世紀少年そのものに変わりはないのだから。
当時の子供達が必死になって追いかけた何かのように、確かに全容を追いかけた作品は、まさに20世紀最高の発明、芸術だったと言えます。
浦沢さん、あなたの芸術、爆発してたよ。ひとまずお疲れ様でした★