「ヘイ、ラーメンお待ち!」でこんなん出てきたらビビりますよね。
「中国台湾料理 味仙 今池本店」を祖とする台湾ラーメンは名古屋のご当地ラーメンのひとつであり名古屋めしの定番。
辛くて後を引く1杯は名古屋めしとは何たるかを物語っている気がしなくもありませんが、今回お届けする好来系ラーメンも実は名古屋を代表するご当地ラーメンのひとつ。
アッサリとしつつも滋味豊かな醤油味のスープにモチモチッとした中太麺。約60年の歴史を誇り、いくつになっても食べられそうな優しい優しい老舗の味……って、冒頭の写真を前にそんな説明は無意味なんでしょうが、まあまあどうぞご覧ください。
【雑学】好来系ラーメンとは?
- 1959年(昭和39年)愛知県名古屋市千種区に誕生した「好来」を発祥とするラーメン店の総称
- 今回紹介する「好来道場」が正当な継承店として位置づけられており、名古屋市を中心に複数の暖簾分け店や孫弟子店が存在。その数30店舗以上とも
- 家系ラーメン店の多くが屋号を「●●家」とするように、店名に好来の「好」の字をあてがっているケースが多い
- 鶏ガラ・豚骨・野菜・魚介類でダシを取った醤油味のスープ、アッサリとしつつも複雑かつ栄養満点なその味わいは、しばしば“薬膳ラーメン”とも称され多くのファンを魅了している
- いわゆるチャーシューメンとかではなく、「松」「竹」「寿」なる一見何のことだかサッパリ分からない商品構成が特徴
…箇条書きだとちょっと分かりませんよね。もろもろ後述します。
「好来道場」について
店舗情報
店名 | 好来道場(こうらいどうじょう) |
---|---|
住所 | 愛知県名古屋市千種区春岡通6-1-16(地図) |
電話番号 | 052-735-3655 |
営業時間 | 11:00~14:00(売切れ次第終了) |
定休日 | 日曜日 |
支払い | レジにて現金払いの前金制(カード・電子マネー不可) |
席数 | 10席(カウンターのみ、店内に待合席あり) |
タバコ | 禁煙 |
最寄駅 | 名古屋市営地下鉄桜通線・吹上駅(駅からお店まで約650m、徒歩8分ほどの距離) |
駐車場 | お店正面右隣りに1台分、お店から東に30mほどの場所に9台分の専用駐車場あり。 |
外観など
店名は「総本家 好来」ですが、目の前の電信柱に「らーめん専門 好来道場」と記載されてて、やっぱり道場なんだと実感。
勝手口の右横に、これまた大きな木の看板で「御存知 好来」としている点にも風格とやらが感じられます。
店頭掲示の専用駐車場への案内図。
車社会の名古屋ということもありお店周辺は大通り。
それこそガチの道場生が夕日に向かって走っていても決しておかしくない、どこか落ち着いた町並み。
最寄の吹上駅からお店までの間にめぼしいポケストップやジムもないため、歩きスマホせず全力ダッシュで向かうことも可能っちゃ可能。
注文方法&メニュー一覧
まずは入口右手のレジにて食券を購入します。
購入するんですが、初見だと確実に戸惑うであろう一覧表。
かろうじて小文字でメンマやらチャーシューやらめん多しとありますが、どこにもラーメンの文字がなく、いずれのメニューも漢字と硬派な出で立ち。
商品名 | 価格 | 備考 |
---|---|---|
松 | 900円 | 基本ラーメン。肉3枚 |
竹 | 1,100円 | メンマ多し。肉3枚 |
寿 | 1,100円 | チャーシュー多し。肉7枚 |
寿竹 | 1,300円 | チャーシューメンマ多し。肉7枚 |
大松 | 1,100円 | めん多し(大盛)。肉4枚 |
大竹 | 1,300円 | めんメンマ多し。肉4枚 |
大寿 | 1,300円 | めんチャーシュー多し。肉7枚 |
大寿竹 | 1,500円 | 全部多し。肉7枚 |
快老麺(並) | 900円 | トロロ昆布入り。肉2枚 |
快老麺(大) | 1,100円 | トロロ昆布入りの大盛。肉3枚 |
ねぎ多し | 100円 |
メニューに関する補足
- 基本ラーメンと付記されているとおり、900円の松注文多し
- 竹=メンマ増し、寿=チャーシュー増し、大=麺増し、快老=トロロ昆布入りの意
- 大松以降の大から始まる大盛メニューは、麺が1.5玉に増量
「松」「竹」「寿」は読めても寿竹は「ことぶきたけ」なのか「じゅちく」なのか「じゅたけ」なのか、大松は「おおまつ」なのか「だいまつ」なのかはたまた「だいしょう」か、大竹はきっと「おおたけ」なんだろうけどそれだと人名みたいだなーとかとか……
どのメニューだとどのトッピングが多くて価格がいくらでー以上に、商品名に興味津々な方も多いんじゃないでしょうか。
唯一平仮名のねぎ多しもねぎ多めじゃなく“多し”って部分にもちょっと惹かれるもんありますし、トロロ昆布のことを快老(かいろう)と表記するのも何だか面白いですね。
今回はチャーシューメンマ多しの「寿竹(じゅちく)」にトロロ昆布をトッピングした「快老寿竹」…いや「寿竹快老」…うーんと「トロロ昆布寿竹」…まあどうでもいいや…をオーダー。いわゆる全部乗せメニューです。
会計後、メニュー名と番号が打ち込まれた黒札を渡されるので、それを持って待合席に移動。しばらくすると「じゅちくの2番のかたー」と言った具合に呼ばれ、指定された席に着席するスタイル。
店内の雰囲気
厨房と相対するように奥へとまっすぐなカウンター10席。
平日金曜日の13:00手前の訪問で店内満席、後客続々とさすがは老舗であり人気店。
定休日は日曜日のみですが、11:00~14:00(売切れ次第終了)の昼営業のみ。土曜日や祝祭日だとさらなる混雑が予想されますので、それらの日はなるべく早い時間帯での訪問がベター。
メニューの木札が何となく門下生の札みたいだし、カウンター上にラーメンとは直接関係ない精神論やら店是五ヶ条やらが掲げられていて、まさに道場のような様相。
着席のタイミングで、冷水機から注いだ水が供されます。
横置きされたレンゲが、まるで道場に並べられた武具のそれ。
高齢の男性2名が調理、配膳や洗い物などは女性スタッフが担当。
ここでもやっぱり、人生経験豊富であろう面々が泰然自若に振る舞う姿を拝見すると、彼らを武道の達人と重ねてみても遜色なし。
多くのラーメン店ではテボと呼ばれるステンレス製の上向き取っ手ザルを使用しますが、「好来道場」では内側が十字に仕切られた大ザルを使用し、1度に4杯分の湯切りをまとめてこなしますと。それもある意味見もの。
そういう、他ではあまり見かけない光景も達人って印象に拍車をかけているような、そんな気がしました。
とはいえ、何から何までコテコテに道場といった感じでもなく、例えば店内BGMが古めの洋楽だったり、メニューがよく分からなくて質問した時に彼ら男性陣がそつなく受け答えしてくれたりと、客側が張り詰める必要はまったくございませんのでご安心を!
ラーメンレビュー
名古屋で愛され約60年のご当地ラーメン!「好来道場」の寿竹快老乗せで1,300円
「おいしそう!」以前に、ただただ「すげえ。。」
表面全体を覆う大判トロロ昆布の存在感、言われなくてもみな注目。
この大胆な使いっぷり、名古屋めしに漂うある種共通のダイナミックさ。
あふれんばかりに並々と注がれたスープ!というかあふれていたから敷き皿はスープまみれ。
そんなラーメンのトッピングは、チャーシュー・メンマ・刻みネギ・海苔・トロロ昆布と比較的シンプル。シンプルなんだけど、その使い勝手が大胆不敵ならぬ大胆素敵。
まずは本来の味を知るため、トロロ昆布を器用にずらしてレンゲでスープをズビビビビ!
スープは評判通りの優しさで、単純にアッサリ醤油スープとカテゴライズできない、何とも形容しがたい風味が感じられます。
それでも無理やりにでも形容したくってレンゲで1ズビ、2ズビビ、3ズビビビと繰り返し確かめるワケですが、口にするほどにじわじわと優しさが広がって行く感じ。きっとバファリンよりも優しい。
モチッとした食感の中太ストレート麺。
穏やかなスープに弾力性のある太麺、味噌汁とご飯の組み合わせを彷彿とさせる安定のおいしさ。名古屋めし=味が濃いってイメージとは一線を画す仕上がり。
適切な材料を適切な温度管理で仕込めば透明なスープが生まれるところ、「好来道場」のそれが濁り気味なのは、素材をグツグツとごった煮にしているからだそうで、そうすることで独特なコクを生み出しているとかいないとか。
メンマ多しの竹メニューだから本当に多く、
1本1本が太くて大きいメンマが20本くらい入ってた!
トロロ昆布入りにしてもらったので従来の寿メニューよりも1枚減ったものの、それでも豚バラ肉チャーシューが6枚入り!
どうしたっててっぺんにドーンな快老のインパクト抜群なため、つい他の具材が霞んで見えがちですが、「寿竹」にすると公称どおりチャーシューもメンマも存分にいただけます。
特に、トロロ昆布をどけると一面のメンマ畑は大変頼もしく、エントランスドアの竹イラストは、ただただ風流と受け流すのではなく「ウチ(好来道場)はメンマ多いですよ」とさり気なくアピールしているかのように思えて仕方がありません。
トロロ昆布はスープと一緒に味わったり、このように麺に絡めていただくと、お酢とは違う酸味と魚介成分がダイレクトに楽しめます。
名うてのラーメン店のつけ麺で、麺が昆布水に浸った状態で出されることもありますが、アレ以上に酸味&とろみがニュルリラ状態で、普通の麺を啜り上げる際に奏でる音をズビビンとするなら「好来道場」の快老麺はニュビィヴィンと言った感じですね。
大丈夫、ぼくは正常です。
ちなみに、ねぎ多しだと宣言どおり多いです。
青ネギ1本分は使っているかもな分量ですが、しかし快老麺や快老乗せにした際の、トロロ昆布や海苔のニュルッと感を程良く緩和してくれるシャキシャキっぷりは見逃せないオプションとも言えるでしょう。(ねぎ多しは別皿での提供も可能)
一風変わった卓上調味料で味変する醍醐味
胡椒・ラー油・ラーメンダレに加え、ガーリックパウダーと高麗人参酢を常備。
こんな風にある程度食べ進めたら、
自家製ラー油をレンゲにたらーり、混ざり過ぎないように辛味をプラス!
まあ、失敗しちゃったんですけど。
このラー油はスープにドボンな使い方よりもチャーシューやメンマにつけて召し上がるのが良さ気。ピリ辛メンマにピリ辛チャーシュー、文字にするだけでもバッチリですしね。
気を取り直して高麗人蔘酢をオン!
自家製ラー油は激辛とかの類いではなくベースの胡麻油もしっかり感じられ、高麗人参酢はよくあるお酢よりもやや酸味が抑えられた、これまた面白い後口。
胡椒もガーリックパウダーも試してみましたが、独自性も考慮するなら高麗人蔘酢>自家製ラー油>ガーリックパウダー>胡椒の順での使用がおすすめですかね。
字は違えど“高麗”と”好来”が同じコウライなことにもただならぬ運命(さだめ)を独り勝手に感じております。
ご覧のとおり完食です!
スープ量が多く残しそうと感じた食べ始め。でも、トロロ昆布に各種調味料のおかげで最後まで飽きずに飲むことができました。
今後初めて訪れる方向けに色々とまとめておきますので参考までに!
まとめ
- 11:00~14:00(売切れ次第終了)の1日3時間営業なので、可能な限り早めの訪問を心掛けましょう
- 基本ラーメンの「松(900円)」にもチャーシュー・メンマ・ネギは入るので、「竹」以上のメニューは無理せず食べ切れる範囲で注文しましょう
- オーソドックスな味わいを求めるならやはり「松」の注文が無難ですが、トロロ昆布乗せの「快老麺(並)」も同価格で楽しめるので、昆布と海苔が苦手じゃなければそちらもおすすめ
- メンマとチャーシューもモリモリ食べられるぞって意味で、今回紹介したメニュー(寿竹快老乗せ)が個人的にイチ押し
食べ終えてお店を出た際の妙な満足感。まさに道場でひと稽古つけた後のよう。
単に昔ながらのアッサリ醤油ラーメンというジャンルに留まらない、むしろこの好来系も昔ながらのラーメンなんだよなって事実に、名古屋人ならではの意地というか一筋縄ではいかない市民性らしきものを垣間見ました。
快老という言葉には「生気に満ちた老年期を歩んで行く」という意味合いも込められているようですが、なるほど、人間いくつになっても健康でありたいものですし、「好来道場」の特製ラーメンをいつでもおいしく食べられる、そんな老後を迎えられたらステキだなと。
この「好来道場」はもちろん、他の好来系ラーメン店も気軽に食べ歩きできる地元民が羨ましい限りです。