- 2017/02/16:更新
- 2015/02/18:初公開
「慌てるな 心と胃袋がつんのめってるぞ 俺!」
出だしからなに意味不明なセリフを決めちゃってんの?って場合は大抵例の作品の記事を書く時だけ……とでも覚えていただければ損もしないし得もしないワケですが、漫画版「孤独のグルメ2」第12話「東京都荒川区日暮里繊維街のハンバーグステーキ」の聖地巡礼レポートをお届けいたします。どうぞお楽しみください!
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激安服屋が立ち並ぶ日暮里繊維街で圧倒的な個性を放つ創業約80年の老舗洋食屋「ニューマルヤ」
激安ファッションといえば真っ先に名前が挙がるヘイワ堂や、
近くにエドウィン本社があることでも有名な日暮里繊維街。
縦笛ピロピロしながらでも快適に登下校できそうな広々とした歩道。
「今の小学生も気になるコのリコーダーをペロペロ舐め回したりするのかな?」なんてアレなことを考えつつピーヒャラピーヒャラ目的地へと向かいます。
雨降り&平日夜ということで寂しい感じもしますが、日暮里駅、三河島駅どちらからもほぼ一直線な道のりを10分ほど歩きます。
日暮里中央通り交差点の手前付近。
日暮里駅からの徒歩だとバス停の少し先に、ほら、写真左手にうっすらと見えてきましたね。
こちらが舞台の「ニューマルヤ」です、って全然ニューじゃねえ!
アフロ級の蔦で覆われまくった日暮里「ニューマルヤ」の度肝を抜く外観
ちょっとした秘密基地っぽいですが飲食店です。
入口部分だけは絡ませまいと死守されているんでしょうが、だからこそ蔦部分が余計に際立って見えちゃう気がしなくもありません。
シャーと通り過ぎるのが地元民の証拠と断言してもおかしくないくらい個性的。
「週刊SPA!2015年2月24日号」掲載時は、大胆にA5サイズで描き上げることで唯一無二の佇まいを表現。
「段差あり」よりも「お店あり」の看板が先じゃないだろうか。
路地出口に設けられた「止まれ」の標識、蔦の成長よ止まれってことでしょうか?
と勘違いしたくなりますし、実際車走らせてすぐそばにこんな建築物があったら走り去るよりも素で止まって見入っちゃいそうなレベル。
背の高い通行人だと頭がめり込んじゃうほどに成長を続ける蔦。
営業中の札こそぶら下がってはいるものの、
ショーケースと立て看板が無ければ廃屋にしか見えなさそう。
予備知識が無ければ入店するのをためらっても決して不思議じゃないでしょうが、ここは日暮里繊維街。きっとこの蔦も何らかの繊維だ造花だとポジティブにとらえながら足を踏み入れれば恐れる心配はまず無いことでしょう。
なお、大通りを挟んで目と鼻の先に現役パティシエが営むつけ麺専門店「裏サブロン」がありまして、こちらも予備知識が無いと入るのはおろか存在すらスルーしてしまうんじゃないかって思えるほどの穴場感が漂っております。
扉をくぐると古き良き時代がお出迎え。昭和レトロ全開でありつつも清潔さと落ち着きを兼ね備えた空間
4名掛け中心のオールテーブル席、店内外のギャップが印象的
どん。
どん。
「どどんとこの再現度を見よ」と豪語するにふさわしい谷口ジローワールド全開。
白いテーブルに赤いイス、紅白を連想させおめでたいですし、何より蔦だらけの外っ面に対して大変素朴なこの店内、実に良い。
第一印象がアレな場合ほどほんの少しでも良い面見せると感じ良く見える理論じゃないですが、掃除も行き届いていて居心地も良好、喫茶店としても利用してみたいですね。
入口左手にきちんと置かれた雑誌や新聞にもご主人の誠実さが垣間見えますね。
ひと通りの洋食は食べられる「ニューマルヤ」のメニュー一覧
定番メニューをしっかり抑えているのってありがたいですよね。
蛍光灯が反射して見づらくなっている上部については、左側の上2つはカレーライス600円、ハヤシライス650円、右側最上段のコーヒーはココア、紅茶、ミルク、ミルクコーヒーと同額の350円。
その他メニューに関する補足
先客が口にしていた料理をハンバーグステーキと判断。はは~んて。
- 主人公・井之頭五郎(以下ゴローちゃん)が疑問に思ったポークライスは焼飯のこと。現代のポークライスはケチャップ味が主流なのに対して「ニューマルヤ」では昔ながらの醤油味で提供
- ハムライスはまさにケチャップライスで具材にハムを使用したそれはそれで硬派というか何というか大切にしたい1品
- +50円のゴールデンカレーライスは目玉焼きが乗ったカレーライスのことで、インペリアルハンバーグステーキと同様の立ち位置
- スパゲティはナポリタン風パスタ
卓上調味料は醤油、塩(写ってませんが)とシンプル。
聖地巡礼ということで、ゴローちゃんとほぼ同じメニューを注文。ナイフ、フォーク、ペーパーナプキンが置かれ、カウンター奥の厨房で調理に取り掛かるご主人はこの店の2代目。
フライパンでじっくりと焼き上げられるメインディッシュをはじめとする鉄板メニューのジュージュー音、付け合わせをこしらえる際に奏でるリズミカルな包丁さばき。きっと1年だ2年前からとかじゃなく何十年とお客さんの耳を楽しませて来たんだろうし、これからだってきっと……だなんて希望を流れるテレビのBGMに託しつつ、たまには水をグビリグビリしながら待ちました。
日暮里「ニューマルヤ」のハンバーグステーキライス&ハムエッグ
ちょこんとワンポイントな練りがらしが気になる皿料理が2品
ハムエッグはハムの厚みだけで充分なインパクトだから奥に配置。
ハンバーグとハムエッグ、それぞれの練りがらしワンペアも達成。
明るい色味なのは撮影に失敗したからではなくハンバーグから立ち上がる蒸気でレンズが曇ったからってそれ失敗じゃんね。
理想形との出会いに心と胃袋がつんのめっちゃうゴローちゃん。
具なしスパゲティがほうれん草のバターソテーに置き換わっているなど細かい点での違いはあるものの、繊細な描画力を堪能できます。
いきなりテンション全開の姿に待て待てとツッコミを入れる読者もきっと多数。
いやでもまあ、うん、こんな風にそのまんまパクッとしてみたり、
ナイフでカットしただけの、持ち上げるだけでホロリと崩れそうな儚さを、
ライスという確かな存在で包み込むように頬張れば、それは紛れもない現実さ。
本来、蔦にまみれた空間で食べる肉料理。例えば焚き火で炙り焼きにしちゃったりなんかして、調理中にしたたり落ちる肉汁が火の粉と食欲をバチバチッと燃え上がらせる、まあそんな豪快な何かを想像するのかもですが、「ニューマルヤ」でいただくそれはその手のワイルドさとは無縁。優しさと懐かしさがルームシェアした、お隣さんとして心から迎え入れたくなる素朴なおいしさ。
茶碗に箸じゃなく平皿によそってフォークで食べる違いも関係してそうですね。
厚めのスライスハムと半熟目玉焼きの共演が嬉しいハムエッグ
ベーコンエッグもステキだけれど、たまに無性に食べたくなるのがハムエッグ。
ゴローちゃんもつい上ハムと口走る上機嫌っぷり。
卵かけご飯が問答無用においしいんだからオン・ザ・ライスだって最高さ。
1個をライス、もう1個はハンバーグで鉄板の組み合わせ!鉄板メニューなだけに。
ハムとハンバーグの牛肉でハギュウな食感を実現!って我ながら意味不明ですね。
相当ご機嫌なゴローちゃん、一体誰に物申しているんでしょうか?
で、おれはご覧のとおり完食です!(汚いのでモザイク処理済み)
そしてゴローちゃんももれなく完食するんですが、そもそも彼がここまでナイスな気分なのって、かつて食べたくても食べ切れなかった「東京都板橋区大山町のハンバーグ・ランチ(孤独のグルメ【新装版】第12話)」以来、実に20年以上ぶりのハンバーグステーキだったからじゃないでしょうか。
【参考】大山町ハンバーグランチの聖地巡礼レポはこちら
20年……月刊PANJA連載時に生まれた子供が成人になる。そう考えるとたかがハンバーグもされどハンバーグのように感慨深く思えてくるから不思議です。
一方その頃、ゴローちゃんのハンバーグ完食を祝して(単に食いたかっただけ)ポークライスで乾杯だ!
最初から狙っていたので、ハンバーグステーキのライスを並盛オーダーにしたのはこのためです。(それでも食べ過ぎ)
ソーダ水でここまでわび・さびを感じさせる漫画を他に知らない。
きっとクリアなサイダーに違いないと頼んだら、残念、メロンソーダでした。
目にした瞬間に妙な何かが芽生えつつも、「そうか、昔ながらを守るお店なんだからソーダと言ったらコレなんだよなー」と納得しつつ、最後の最後で色彩的に最悪の組み合わせを体現するに至りました。
【参考】「このワザとらしいメロン味!」でおなじみの聖地巡礼レポはこちら
ポークライスはまさにポークの名に恥じないゴロゴロっぷり。
豚肉、玉子のレギュラー具材にタマネギ、シイタケ、ピーマンが加わるエクストラ仕様ではあるものの、安定して香ばしくておいしくって、
おかげさまでメロンソーダをどう処理しようかタイミングを見失いまして。
ポークライス平らげの瞬間を犠牲フライに見立てて、ホームめがけて全力疾走する野球選手ばりに一気に飲み干しましたよね。
最後のコマで悟りの境地に達したかのようなゴローちゃん。
日暮里・三河島各駅の中間あたりだからそれなりに歩く、ヤヴァすぎるルックスも加えれば、言わずもがな一見さんお断り……そう受け取られる方もさぞ多いとは思うんですが、案ずるより産むが易し、1度でも飛び込んでしまえば意外と大したことが無い、むしろ今までどうして入らなかったんだろうと痛感される方だって多いことでしょう。
ニューと掲げつつも1941年(昭和16年)創業と長い歴史を誇る「ニューマルヤ」。その実、訪問者にこれまでにない新しい体験をもたらしてくれる、そんな副次的なニュアンスが込められているのかもしれません。
店舗情報
店名 | ニューマルヤ |
---|---|
住所 | 東京都荒川区東日暮里6-15-4(地図) |
電話番号 | 03-3891-1386 |
営業時間 | 11:30~15:30、17:30~20:30 |
定休日 | 日曜日・祝日 |
最寄駅 | 日暮里駅、三河島駅 |
備考 | 2017年4月9日(日)迄、土曜日・日曜日・祝日が定休日。 |