- 2017/02/15:更新
- 2014/11/17:初公開
連載当初、彼は静かに黙々と、それでも力強く食べ進めるのでした。
不朽の名作と呼ばれる日もそう遠くないであろう漫画版「孤独のグルメ」が月刊PANJA誌上で産声を上げたのが1994年。そしてそんな同作品の魅力として挙げられるのが主人公・井之頭五郎(愛称:ゴローちゃん)が発する独特の言い回し。
「孤独のグルメ」という作品は知らずとも「人間火力発電所」だの「なんだか凄いことになっちゃったぞ」だとかの迷セリフ名セリフを目にされた方は少なくないと思うのですが……そもそもそれらはなかった、元々うおォンなんてありませんでしたよということで、今回は1994年から1996年に掲載されたPANJA版と単行本版との主なセリフ違いをまとめてみました!
まいったな…出鼻をくじかれた
第03話@PANJA1994年12月号92P掲載
左:PANJA版、右:単行本版。
「がーんだな…」じゃなく「まいったな…」。結局出鼻をくじかれるのは一緒なんですけど、ほんの少し言い回しが変わるだけで不思議と読者に与える印象も変わってくるのかなーと。
モデルとなった「梅むら」については2度したためておりますが、四半世紀の時を経た今ではテントの高級甘味は甘味処に変更、メニューから雑炊や雑煮の表記はキレイサッパリ無くなっており、これから同店を訪れる皆々様におかれましては出鼻をくじかれる心配はございませんのでどうぞ安心して足をお運びください。
【参考】聖地巡礼レポはこちら
ジェットじゃないよなあ……
第06話@PANJA1995年03月号94P掲載
上:PANJA版、下:単行本版。
数ある五郎'sセレクションの中でも決してマネしたくないのが新幹線車内で仕上げるジェットボックスシウマイテロなんですが、今ではそのジェットボックスも東京発のひかり55号自体もなくなりある意味平和そのもの。そうそう歯車がズレる心配も無くなりましたので安心して乗車できるってもんですね。
俺はまるで人間火力発電所か…
第08話@PANJA1995年05月号75P掲載
左:PANJA版、右:単行本版。
「孤独のグルメ」史上最も有名な1コマではありますが、初掲載時のセリフには「うおォン」も「人間火力発電所だ」の言い切りもなく、どちらかというと大食漢の自分自身に淡々と独りツッコミを入れている感じでした。迷言名言は初めから迷言名言じゃなかったことを伺わせる貴重なカットとも言えますね。
左:PANJA版、右:単行本版。
なお、人間火力発電所として第2の人生を切る前、ライスが来ないことに対するセリフもまた微妙に異なるのでした。
単に語尾に「が」が入る入らないだけの違いなんですが、単行本だと随分とアグレッシブにとらえられますね。この後すぐにライスが到着していなかったら従業員はアームロックからの鉄板に顔面ジュージューの刑に処せられていたことでしょう。
【参考】聖地巡礼レポはこちら
モノを食べる時はね 誰にも邪魔されず自由で救われてなきゃあダメなんだ
第12話@PANJA1995年09月号73P掲載
左:PANJA版、右:単行本版。
「なんというか」が無く断定具合に拍車がかかってますね。人間火力発電所同様に「孤独のグルメ」を代表するセリフの1つではありますが、なんというかゴローちゃん、相当怒っていたんでしょうね。
左:PANJA版、右:単行本版。
横暴な店主にアームロックを敢行した際のスタッフ呉さんの一言も「そこまで!」から「やめて!」に変更。「そこまで!」だと格闘技のレフェリーみたいですもんね。気のせいか呉さん、全然弱そうに見えない。
【参考】聖地巡礼レポはこちら
うーん 腹も減ったし夜食でも食ってひと息つくか
第15話@PANJA1996年01月号71P掲載
左:PANJA版、右:単行本版。
単行本が出るまでの間に作者の身に何があったんだって思えるくらいの痛快オヤジギャグですが、見事、後世に語り継がれる校正と相成りました。
上:PANJA版、下:単行本版。
「なんだか凄いことになっちゃたぞ」も「なんだか凄いな」と至って普通。そりゃ自ら進んで買いまくった食料品をテーブルにおっ広げて「凄いことになっちゃったぞ」って感想は笑止千万も良いところですが、それでもファンが気軽につぶやく現状に鑑みると、リアルなんだか凄いことになっちゃったぞーってヤツですね。
こういうの好きだな シンプルで。ソースの匂い…
第17話@PANJA1996年03月号74P掲載
左:PANJA版、右:単行本版。
かつてはまともだったんだと、このコマを目にした瞬間は驚きよりも心がほっと安らぎました。
それで、この第17話をもって「第1部 完」としており、最終ページの柱コメントにも……
誰の中にも井之頭五郎は住んでいる。春からの第2部に乞うご期待!
と記されていたのですが、残念なことにそれは実現することなく、17話から3ヶ月後の「渋谷百軒店の大盛り焼きそばと餃子」の掲載を最後に、それから12年もの長期休載に突入するのでした。
ああ、あと誰の中にも井之頭五郎は住んでいないと思います。
【参考】聖地巡礼レポはこちら
ああ…白い飯が食べたい
特別編@PANJA1996年06月号74P掲載
上:PANJA版、下:単行本版。
餃子と焼きそばを前にライスが食べられないことを心底寂しそうにぼやくゴローちゃんですが、これから12年後に掲載される「東京都内某病院のカレイの煮つけ」編でも引き続き自分が食べたい物を食べられないままという不変っぷりが大変味わい深いですね。
さまざまな土地をボンヤリ歩き、腹を空かせ、飯を入れる。井之頭五郎は、そんな時間だけに生きている
そんな時間だけにって、柱コメントにまでひどい扱い。
続編書きました!
今回お届けしたセリフほどメジャーじゃありませんが、合わせてご覧いただければこれ幸いです。