- 2017/03/07:更新
- 2014/09/17:初公開
流行を追いかけるのは楽しいですが、ふと立ち止まって昔ながらの雰囲気、往年の味わいに舌鼓を打つのも食べ歩きの醍醐味。
今回は都内屈指の人気散策エリアとして名高い谷中の路地裏で40年以上の歴史を誇る庶民派中華料理店「一寸亭(ちょっとてい)」を、ちょっとじゃない品数の料理とともに紹介いたします。
谷中で40年以上続く庶民派中華料理「一寸亭」
国内外問わず日々多くの観光客で賑わう谷中銀座商店街から1本路地に入ったところにある「一寸亭」
土日祝日ともなれば大混雑必至な谷中銀座商店街。
国産牛肉を使ったメンチカツで有名な「肉のすずき&肉のサトー」、土日祝日のみ営業の「いか焼き やきや」に激安惣菜専門店「いちふじ」などが特に有名で、各店とも行列不可避の繁盛っぷり。
大勢のお客さんで溢れ返るのが好き、あわよくば溶け込んで人類補完計画を遂行したい方々には何てことの無い光景なのかもしれませんが、そこまで人混みを好まない、人混みに出くわすと大抵の確率で1段高い場所から見下ろしては「見ろ!人がゴミのようだ!」と聞き手もいないのに独り言をつぶやくゴミのような思想のおれからするとちょっと辟易。
スタコラサッサと。
かつて「どこでもいい、“めし屋”はないのか」に似た感情とともに、半ば逃げ込むように同商店街の一角を曲がった際たまたま発見したのが……
今回紹介する「一寸亭」なのでした。
振り返れば奴がいるばりに、振り返れば客がいる谷中銀座商店街。
散々足を運びまくって今では谷中でおなじみの食事処ってイメージが定着しちゃいましたが、たった1本路地に入るだけでこんなにも落ち着くなんてね。。
常時100種類近くのメニューを有する「一寸亭」
一品料理、麺類にご飯物、珍味までどんと来い
アットホームな店内。許されるのなら小上がりで寝っ転がりたい。
1973年の創業当時はカウンター7席のみの小さなお店で、1988年に路地を挟んで斜め向かいの現店舗での営業に切り替え。
席数もカウンター7席に加え、2名&4名掛けテーブル各1卓、小上がりも3卓(2名1卓+4名2卓)と計23席にパワーアップ。
オーソドックスな卓上調味料と、水じゃなくお茶なのもナイス。
すぐそばの谷中銀座商店街では、大体の店頭にタレントのサインがこれでもかと飾られせっかくの強調が逆に中和されちゃっている感が否めないワケですが、「一寸亭」ではその手のサインが一切飾られていないんですよね。
松嶋菜々子さんの出世作にしてNHK連続テレビ小説「ひまわり」の舞台にもなり、それこそいつ書かれたのか分からない黄ばんだサイン色紙が飾られていてもおかしくないハズなのに、無い。その潔い姿勢、個人的にポイント高しです。
いわゆるグランドメニュー的な料理の数々。
日本酒、焼酎、カクテルだって扱うドリンクメニュー。
期間限定メニューだとかも貼り出されているので、初めてだと何を頼むべきか迷ってしまうかもしれませんが、常連さんを中心に人気のメニューであり、「一寸亭」の名物がモヤシソバでございやす。
客の大半が注文する名物のモヤシソバ
シャキシャキのモヤシ、トロッとアツアツの醤油あんかけがたまらない
一見普通のモヤシソバ。でも、食感と見た目を考慮し専用のモヤシを使用するこだわりが。
モヤシソバの名の通り、具はたっぷりのモヤシに豚肉とシンプル。
普段熱い麺類を食べ慣れているおれでもうっかりヤケドしちゃうくらいにアツアツ。
あんかけの下にはアッサリ醤油味のスープが潜んでおり、
レンゲで要領よくすくい上げることで味の違いや混ざり合いだとかを感じ取りつつ、フーフーしながらむさぼりたい。
+100円の大盛りは一回り大きい丼にスープもなみなみと。
大盛りの場合は麺固めも忘れずにオーダーしておくと、伸びることを気にせず最後までアツアツのまま召し上がれること請け合いです。
シンプルかつ存分に昔ながらの昭和テイストを満喫したいなら醤油ラーメンがおすすめ
チャーシュー、メンマ、ナルト、ほうれん草に刻みネギと往年のビジュアル。
懐古趣味や名店オマージュという形でこういうクラシカルな見た目の東京ラーメンを再現して出すお店もあるにはありますが、こちらの場合は長年出し続けてきたワケですからね、安心感や説得力の次元が違います。
老舗製麺所「浅草開化楼」の気持ちウェービーな中太麺をズビビンズビビン。
たっぷりのスープ、どっしりと構えたどこか男性的な出で立ち。レンゲでズビビビ、いくらかの甘みを帯びたアッサリ鶏ガラスープ、その旨みをしっかり含ませるように持ち上げた麺との絡み合い。
シャキッと感を残したほうれん草、味の染みたメンマ、醤油っ気が強くもなかなかジューシーなチャーシュー、モチモチ食感が良好なナルト。…最高だ、実に最高だ。
夏だと、冷やし中華も食欲をそそります。
厳選素材を駆使した飲み切りサイズの上品なタイプも好きだけど、おれにとってラーメンといったらこの手のスタンダードな1杯なんだなーと口にする度に実感するし、サイドメニューで餃子だチャーハンを合わせたくなります。
ニラがバッチリ効いたパリッジュワッムニュンな焼餃子。
チャーシュー、玉子、さらにはナルト入りが嬉しいチャーハン。
半チャーハン(480円)も半分とはいえしっかり食べさせてくれる分量なので、どちらにするかはお腹の空き具合と相談して決めると良いでしょう。
何を頼んでももれなくおいしい「一寸亭」魅惑の品々
中華風冷奴(中)
胡麻油の効いた中華風ダレとシャキシャキネギ。
さり気なく挟まれたピータンが良いアクセントに。
レバ炒め
素揚げレバーをネギ、ニンニクの甘辛ダレで仕上げ。
問答無用にオンザライス(スープ・お進行付き)しちゃいたくなりますよね。
とろみ加減の絶妙さは前述のモヤシソバで実証済み。同料金でニラレバ炒めも用意されておりますが、がっつりダイレクトに堪能したいならレバ炒めでしょう。
豚もつ煮
レバーが苦手な方はこちらでホルモン摂取という手もあり。
中華料理屋でもつ煮、そのギャップが妙ではありますが、
臭みのないプリプリもつ、豆腐、コンニャク、異なる歯応えを生姜の効いた煮汁が優しくまとめ上げ、ピリリと七味唐辛子が合うんだなこれが。スープ感覚で汁までジュルリン飲み干したくなるし、実際のところ毎回飲み干します。
チャーハンや中華風冷奴を合わせれば、何だかんだで中華屋気分に。
ソース焼ソバ
キャベツ、ニンジン、モヤシにキクラゲまで入っちゃう。
たくましい中太麺とそれに負けないくらい大きめにカットされた野菜類との共演。
ミミガーとキュウリのピリ辛和えでキクラゲには無いサッパリとしたコリコリっぷりを間に挟みつつズヴィヴィンズヴィヴィン舌先フルスイングでいただいちゃいましょう。
オムライス
子供以上にお父さん世代が喜びそうなオムライスは中華スープで。
「デミグラスソースなにそれ?おいしいの?」と言わんばかりの真っ赤なケチャップに中身もしっかり暖色で統一。
新橋駅徒歩1分の老舗洋食店「むさしや」のオムライスが好きならまず間違いなくハマることでしょう。
この店目当てで谷中というより、ふらり谷中に足を運んだらちょっと立ち寄りたくなる「一寸亭」
近隣住民だと出前もできるそうで、なにそれうらやましい。
東京屈指の集客力を誇る谷中銀座商店街の評判をとことん利用することだってできるんでしょうけど、あえてそこに甘んじず、日々自分達ができることを淡々とこなす経営スタイル。観光客だけじゃなく地元客からも愛されているのも納得です。
一言で、実直。2代目に当たる息子さんも真面目にテキパキ動くタイプで、おれが初代のお父さんなら安心して店を任せると思いますし、今後も末永く続いて行くことでしょう。
散歩の合間や散策の終着点にふらり訪れたい“ちょっと”良いお店、谷中の「一寸亭」さんでした。
店舗情報
店名 | 一寸亭(ちょっとてい) |
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住所 | 東京都台東区谷中3-11-7(地図) |
電話番号 | 03-3823-7990 |
営業時間 | 11:30~21:30 |
定休日 | 火曜日 |
最寄駅 | 日暮里駅、千駄木駅 |