縁の赤いチャーシューが昔ながらの証拠。日本橋「たいめいけん」のラーメン。
多くのラーメン専門店ではライバル店との差別化を図ることを理由の1つに、今の味をもっと美味しくすることや変わった食材を取り入れてみるだとか新メニューの開発等に余念がありません。
ラーメンはラーメン屋で食べるもの。そんな考えが当たり前となりつつある中、あえて今回は日本橋の老舗洋食店「たいめいけん」の一角にあるらーめんコーナーで提供される昔ながらと独特の雰囲気、両方を併せ持つラーメン、洋食の定番・カレーライスと付け合わせについてお届けしたいと思います。
1931年(昭和6年)創業、80年以上の歴史を誇る日本橋の老舗洋食屋「たいめいけん」
オムライスと言えば「たいめいけん」と語る人も多い有名店。
1階はカジュアルな洋食屋、2階は高級レストラン、複数の顔を持つ同店の、
1階正面入口を入ることなくぐるっと回るとそこには…
最大4~5名収容の1階立ち食いらーめんコーナー
引き戸の「らーめんコーナー」のフォント、看板の「麺」がとってもレトロ。
このビル自体が1973年の竣工で、2004年に1階部分はリニューアルされているものの、それでもビルの歴史的に40年とかなりの古さを誇ります。
入店してもちょっとした段差が。
すぐ後ろを通り過ぎる人。
大都会・日本橋ではそうそう体験できない距離感ともとれますが、このらーめんコーナー最大のポイントにして見せ場と言えるのが…
びっくりするくらい丸見えな厨房との距離感に他なりません。
目の前で皆さんが食べる分の調理はもちろん、らーめんコーナーで取り扱わないメニューが完成するまでの一部始終を拝むことができるステキっぷり。
例えば、社会人になりたての青年がこのらーめんコーナーでラーメンを啜りながらいつの日かお金を気にせず1階や2階のレストランでたらふく食べることを夢見つつ日々の仕事に精を出したんじゃないかとか、今では厨房を立派に取り仕切っているコックさんもかつては見習いでせっせと汗を流していたんじゃないかとか、色んな人間ドラマを想像できる楽しみがあるんですよねぇ。
【2015年3月現在】スモークで外部の視線を気にせず食事ができるように。
「たいめいけん らーめんコーナー」のメニュー一覧
らーめんコーナーではラーメンとカレーライスの2本柱を提供。
ここに来たら50円のボルシチとコールスローの注文は欠かせません。
両方頼んでも100円と、生玉子よりも10円高く煮玉子よりも30円安く、ネギ、メンマ、バターと同料金なコストパフォーマンスの高さが売りです。
【2015年3月現在】全体的に値上げしましたが、それでもボルシチ&コールスローは嬉しい据え置き!
ただ多いだけではなく、普通に洋食屋で使われている調味料の数々。
ウスターソース、酢、ホワイトペッパー、タバスコにニンニクと、ラーメン屋にありそうでないあたりが見てて楽しい。
嬉しすぎる50円!「たいめいけん」のボルシチ&コールスロー
これでもかとキャベツが摂取できます。
ザク切りに近いから食感と酸味で目が覚めます、覚めました。
ボルシチもキャベツ多め、玉ねぎが嬉しく、やはり目が覚めました。
これらのみの注文はできませんが、いわゆるラーメン屋で+100円してもせいぜい味玉やライスあたりの追加がいいところなのに対して「たいめいけん」の場合は単品で2品だからちょっとした贅沢気分が味わえちゃうのが嬉しいですね。
香味野菜をふんだんに使用した洋風テイスト!「たいめいけん」の醤油ラーメン
チャーシューの赤と白、サヤエンドウの緑でトリコロールカラー。
レンゲは敷皿の上に乗せての提供。
具はチャーシュー、サヤエンドウ、メンマ、海苔、青ネギ。
食紅で赤く色付けされた固すぎることも柔らかすぎることもない歯応えのチャーシュー、甘めに味付けされたコリコリメンマ、シャキッとしたサヤエンドウといずれも良好な仕上がり。
洋食専門店だからこそ入る特別素材でダシをとったスープ。
いわゆる豚骨や魚介はもちろんのこと、パセリの茎や白ワインで蒸した高級天然真鯛のアラに代表されるように、普通のラーメン店ではそうお目にかかれない食材を使用できるのは洋食屋さんならではの強みと言ったところでしょうか。
一口ズズズと啜れば、最初はブイヨンやコンソメあたりの上品さ、続いて香味野菜や醤油ダレのスッキリさ、最後に独特の強い甘みが余韻となってもう一口、二口と、アッサリしつつもコクのあるスープをコクコク頷きながら飲む昼下がり、何だか不思議な感覚です。
中細縮れ麺は個人的にもっとコシが強いのウェルカム!
だけど、このくらいの茹で加減がちょうどいい人が多いのかな?
1階レストランの方でもラーメンは根強い人気なのか、結構頻繁に注文が入ってはラーメンを作って提供していたのが印象的でした。
チャーシューメンにすると赤縁チャーシューがプラス4枚。
これぞ王道!「たいめいけん」のポークカレーライス
頼むときちんと紙ナプキンにくるまって登場するスプーン。
調味料と一緒に雑然とスプーンが置かれているのではなく、きちんとオーダーを受けてから食べるのに必要なスプーンを提供する、当たり前のことですが、なんとなく洋食屋としての挟持と言うのかな、そんなのが感じられます。
カレーに並々ならぬこだわりを持つ「蒲田のラーメン屋・インディアン」でも同じようにスプーンは後から提供でしたねそういえば。
どどんとカレーライス。この日もボルシチとコールスローは忘れずに注文。
このビジュアルに興奮を隠し切れない人も少なくないんじゃないでしょうか。
カレーライスに定番の漬け物・福神漬もナイスな色合い。
外食のカレーは安く済ましちゃうおれには豪華な680円カレーライス。
実際カレーに680円もかけると角切りポークがこれでもかとルーに収まった状態に正直驚きを隠せず、いやまてよ、洋食専門店として日々大量の食材を扱う「たいめいけん」だからこそ成せるのかもしれないけれど、肉がゴロゴロゴロリンと、嬉しい一品なのに変わりはありません。
黄味がかったルーもこう、アドレナリンをどくどくと放出してくれちゃいそうで、俄然やる気と食う気が交互に押し寄せて参ります。
大盛カレーライスは+300円の980円で、
並盛よりもライスが+100gの400g弱、ルーも1.5倍と多めになりますが、ルーがそこまで欲しくないけどごはんが食いたい場合は+100円のライス注文してカレーライスライスにすれば良いのかなってアホなこと考えたりもしたけれど、コールスローの酸っぱさが現実に戻してくれたようで、カレーライスとボルシチ&コールスローセットをばくばくいただきまして、
見事完食!(※汚いのでモザイク処理済み)
ラーメンに入れるお酢の代わりにコールスローをいただくのもアリだとは思いますが、おれ的にこのらーめんコーナーではあえて680円のカレーライスを注文し、コールスローとボルシチもセットで食べながら厨房の様子をぼんやりと眺めつつ、食べ終わったら「ごちそうさま」とだけ言い残して颯爽と去る…。
前金制であり立ち食いカウンターだからこそできるこの芸当、ちょっとしたハードボイルドな気分に浸りたい時にもおすすめの1軒と言えそうです。